この記事では、メーカー・製造業の全体像を詳しく解説します。業界の定義や仕組み、現状から、食品、建設、自動車など各分野の特徴まで幅広く網羅。さらに、関連職種や最新トピックスも紹介し、就職や投資の参考になる情報を提供します。日本のものづくりの強みや課題、IoTやAIによる変革の動向なども解説。メーカー・製造業について総合的な理解が得られ、業界の将来性や可能性を考察する上で役立つ内容となっています。
メーカー・製造業の業界研究
メーカー・製造業は、日本経済の根幹を支える重要な産業セクターです。この業界は、原材料を加工して製品を生産し、消費者や他の企業に供給する役割を担っています。業界研究を行うことで、メーカー・製造業の全体像や特徴、課題、そして将来の展望を把握することができます。
業界の概要
メーカー・製造業は、多岐にわたる分野を含んでいます。自動車、電機、食品、化学、製薬など、様々な製品を生産する企業がこの業界に属しています。日本の製造業は、高品質な製品と技術革新で世界的に知られており、国内総生産(GDP)の約2割を占める重要な産業です。
主要企業と市場シェア
日本のメーカー・製造業には、世界的に有名な企業が多数存在します。例えば、トヨタ自動車、パナソニック、ソニー、日立製作所などが挙げられます。これらの企業は、それぞれの分野で高い市場シェアを持ち、日本経済を牽引しています。
業界のトレンドと課題
近年、メーカー・製造業は大きな変革期を迎えています。主なトレンドと課題には以下のようなものがあります:
デジタル化とIoT
製造プロセスのデジタル化やIoT(モノのインターネット)の導入が進んでいます。これにより、生産効率の向上やコスト削減が期待されていますが、同時に、デジタル人材の確保や既存システムとの統合といった課題も浮上しています。
グローバル化と競争激化
国際市場での競争が激化する中、日本のメーカーは海外展開を加速させています。しかし、新興国企業の台頭や貿易摩擦などの地政学的リスクにも直面しています。
環境問題への対応
地球温暖化対策や持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みが求められる中、メーカーは環境負荷の低い製品開発や生産プロセスの改善に注力しています。
業界の将来展望
メーカー・製造業の将来は、技術革新と社会のニーズに大きく左右されると考えられます。以下のような要素が今後の業界の方向性を決定づける可能性があります:
人工知能(AI)と自動化
AIや機械学習の発展により、製造プロセスの自動化がさらに進むと予想されます。これにより、生産性の向上や人手不足の解消が期待される一方で、雇用構造の変化にも注目が集まっています。
新素材の開発
カーボンナノチューブやグラフェンなどの新素材の研究開発が進んでおり、これらの素材が製品の性能向上や新たな用途の創出につながる可能性があります。
循環型経済への移行
資源の有効利用や廃棄物の削減を目指す循環型経済への移行が進んでいます。メーカーは、リサイクル可能な製品設計やリマニュファクチャリングなどの取り組みを強化しています。
業界研究の方法
メーカー・製造業の業界研究を行う際には、以下のような方法が効果的です:
統計データの分析
経済産業省や総務省などが公表している統計データを活用し、業界の規模や成長率、市場動向などを把握します。
企業の財務諸表の分析
主要企業の有価証券報告書や決算短信を読み込み、売上高や利益率、研究開発費などの財務指標を分析します。
業界誌や専門家の意見の収集
日経ものづくりやNIKKEI Asian Reviewなどの業界誌や、アナリストレポートを参考に、最新のトレンドや専門家の見解を理解します。
展示会や学会への参加
CEATEC(シーテック)やマニュファクチャリングワールドなどの展示会に参加し、最新の技術や製品に触れることで、業界の動向を肌で感じることができます。
以上のような多角的なアプローチを通じて、メーカー・製造業の業界研究を行うことで、この重要な産業セクターの全体像を把握し、将来の展望を見通すことが可能となります。
メーカー・製造業とは
メーカー・製造業とは、原材料や部品を加工し、製品を生産する企業や産業のことを指します。日本の産業構造において重要な位置を占め、経済成長の原動力となってきました。
メーカー・製造業は、多岐にわたる分野で活動しており、自動車、電子機器、食品、化学製品など、私たちの日常生活に欠かせない製品を生産しています。
メーカー・製造業の特徴
メーカー・製造業の主な特徴として、以下のようなものが挙げられます:
- 製品の企画・開発から生産、販売までを一貫して行う
- 大規模な設備投資が必要
- 技術革新や品質管理が重要
- グローバル競争が激しい
- サプライチェーンの管理が複雑
メーカー・製造業の主な分野
メーカー・製造業は、様々な分野に分類されます。主な分野には以下のようなものがあります:
1. 自動車産業
トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業などの大手自動車メーカーを中心に、部品メーカーも含む巨大な産業群です。
2. 電機・電子産業
パナソニック、ソニー、日立製作所などの総合電機メーカーや、半導体メーカーなどが含まれます。
3. 食品産業
味の素、キリンホールディングス、明治ホールディングスなど、食品や飲料を製造する企業が該当します。
4. 化学産業
三菱ケミカル、住友化学、旭化成などの化学メーカーが含まれ、プラスチックや医薬品などを製造しています。
メーカー・製造業の役割と重要性
メーカー・製造業は、以下のような重要な役割を果たしています:
- 雇用の創出:多くの雇用機会を提供し、経済の安定に寄与しています。
- 技術革新:研究開発を通じて新しい技術や製品を生み出し、社会の発展に貢献しています。
- 輸出産業:日本の主要な輸出品目を生産し、国際収支の改善に寄与しています。
- 地域経済:工場や関連企業が集積することで、地域経済の活性化に貢献しています。
メーカー・製造業の課題と今後の展望
メーカー・製造業は現在、以下のような課題に直面しています:
- グローバル競争の激化:新興国企業の台頭により、国際競争が一層激しくなっています。
- 環境問題への対応:CO2排出削減や廃棄物削減など、環境負荷の低減が求められています。
- デジタル化への対応:IoTやAIの導入による生産性向上が課題となっています。
- 人材確保:少子高齢化に伴い、技術者や熟練工の確保が難しくなっています。
これらの課題に対応するため、メーカー・製造業は以下のような取り組みを進めています:
- 高付加価値製品の開発:独自技術を活かした差別化製品の開発
- サービス化:製品販売だけでなく、保守・メンテナンスなどのサービス提供
- スマートファクトリー化:IoTやAIを活用した生産性向上と品質管理の強化
- サステナビリティへの取り組み:再生可能エネルギーの利用やリサイクル技術の開発
メーカー・製造業は、これらの取り組みを通じて、今後も日本経済の中核を担う産業として発展していくことが期待されています。
メーカー・製造業の仕組みと流れ
メーカー・製造業の仕組みと流れは、製品の企画から販売までの一連のプロセスを指します。この過程は複雑で多岐にわたりますが、主要な段階を理解することで、製造業の全体像をつかむことができます。
1. 製品企画
製品企画は、新しい製品を生み出すための重要な第一歩です。市場調査やトレンド分析、顧客ニーズの把握などを通じて、製品のコンセプトや基本仕様を決定します。
市場調査
競合他社の製品分析や消費者動向の調査を行い、市場ニーズを把握します。例えば、スマートフォン市場では、常に新しい機能や性能向上が求められています。
アイデア創出
ブレインストーミングやデザイン思考などの手法を用いて、革新的なアイデアを生み出します。日本の家電メーカーは、この段階で独自の技術や機能を盛り込むことで差別化を図っています。
2. 設計・開発
製品企画で決定したコンセプトに基づき、具体的な設計と開発を行います。この段階では、エンジニアやデザイナーが中心となって製品の詳細を決定します。
3D設計
CADソフトウェアを使用して、製品の3Dモデルを作成します。トヨタ自動車などの自動車メーカーでは、この段階で車体の空力性能や内装の快適性などを綿密に検討します。
プロトタイプ製作
3D設計をもとに、実際の製品のプロトタイプを製作します。ソニーのPlayStationなどのゲーム機開発では、この段階で操作性や性能のテストを繰り返し行います。
3. 生産準備
設計・開発が完了したら、量産に向けた準備を行います。この段階では、生産ラインの構築や原材料の調達などが主な業務となります。
生産設備の準備
製品を効率的に生産するための設備を整えます。パナソニックなどの大手電機メーカーでは、ロボットアームや自動化設備を導入し、生産効率の向上を図っています。
サプライチェーンの構築
原材料や部品の調達先を選定し、安定的な供給体制を整えます。日産自動車などの自動車メーカーでは、JIT(ジャストインタイム)方式を採用し、在庫の最小化と生産効率の最大化を目指しています。
4. 生産
生産準備が整ったら、実際の製品製造に入ります。この段階では、品質管理と生産効率の向上が重要なポイントとなります。
製造ライン
製品の特性に合わせた製造ラインを構築します。例えば、シャープの液晶テレビ工場では、大型パネルの取り扱いに特化した生産ラインが整備されています。
品質管理
製造過程での品質チェックや完成品の検査を行います。日本の製造業の強みである高品質を維持するため、キヤノンなどのカメラメーカーでは、厳格な品質基準を設けています。
5. 物流・販売
生産された製品は、物流システムを通じて販売拠点や小売店に配送され、最終的に消費者の手に渡ります。
物流管理
効率的な配送ルートの設計や在庫管理を行います。アマゾンジャパンなどのEコマース企業と連携し、迅速な配送体制を構築する製造業も増えています。
マーケティング戦略
製品の特徴や価値を消費者に伝えるための戦略を立案します。資生堂などの化粧品メーカーでは、SNSを活用したインフルエンサーマーケティングなど、新しい手法を積極的に取り入れています。
6. アフターサービス
製品販売後のサポートも、製造業の重要な役割です。顧客満足度の向上と、次の製品開発へのフィードバックを得るために欠かせません。
保証・修理
製品の保証期間内のサポートや修理サービスを提供します。ダイキン工業などの空調機器メーカーでは、24時間対応のコールセンターを設置し、迅速なサポート体制を整えています。
顧客フィードバック
製品使用後の顧客からの意見や要望を収集し、次の製品開発に活かします。無印良品などのライフスタイルブランドでは、顧客の声を積極的に取り入れ、製品改良に反映させています。
以上のように、メーカー・製造業の仕組みと流れは、製品の企画から販売後のサポートまで、幅広いプロセスを含んでいます。各段階で最適化と効率化を図りながら、高品質な製品を消費者に届けることが、日本の製造業の強みとなっています。
メーカー・製造業の現状
メーカー・製造業は日本経済の根幹を支える重要な産業です。近年、グローバル化や技術革新の加速により、業界全体が大きな変革期を迎えています。ここでは、各分野における現状と課題について詳しく見ていきます。
食品・農林・水産
食品メーカーは、健康志向の高まりや食の安全性への関心増大に対応するため、新たな製品開発に力を入れています。機能性食品や植物性タンパク質を使用した代替肉などが注目を集めています。一方で、原材料費の高騰や人手不足が課題となっています。
農林水産業では、スマート農業の導入が進んでいます。IoTやAIを活用した効率的な生産システムの構築が進められていますが、後継者不足や気候変動への対応が大きな課題です。
建設・住宅・インテリア
建設業界では、都市部を中心とした再開発事業や、インフラ整備事業が好調です。一方で、深刻な人手不足に直面しており、外国人労働者の受け入れや、建設現場のICT化・自動化が進められています。
住宅メーカーは、環境性能の高い住宅や、IoT技術を活用したスマートホームの開発に注力しています。また、リフォーム市場の拡大に伴い、既存住宅の改修事業にも力を入れています。
インテリア業界では、在宅時間の増加を背景に、快適な住空間づくりへの関心が高まっています。サステナブルな素材を使用した製品や、モジュール式の家具など、ライフスタイルの変化に対応した商品開発が進んでいます。
繊維・化学・薬品・化粧品
繊維業界では、環境への配慮から、リサイクル素材や植物由来の繊維の開発が進んでいます。また、機能性素材の開発も盛んで、抗菌・防臭機能を持つ繊維などが注目を集めています。
化学業界は、環境負荷の低減と持続可能な社会の実現に向けて、バイオマス由来の原料開発や、CO2排出量削減技術の研究に力を入れています。
製薬業界では、新型コロナウイルスのワクチン・治療薬開発が急ピッチで進められる一方、がんや認知症などの難治性疾患への取り組みも継続されています。また、AIを活用した創薬プロセスの効率化も進んでいます。
化粧品業界では、パーソナライズ化が進んでおり、個々の肌質や好みに合わせたカスタマイズ製品の開発が盛んです。また、サステナビリティへの関心の高まりから、環境に配慮したパッケージや原料の使用も増えています。
鉄鋼・金属・鉱業
鉄鋼業界は、脱炭素化への取り組みが急務となっています。水素を活用した製鉄プロセスの開発や、電炉の活用拡大などが進められています。また、自動車の電動化に伴い、軽量化・高強度化に対応した新素材の開発も活発化しています。
非鉄金属業界では、電気自動車や再生可能エネルギー関連の需要増加を背景に、銅やリチウムなどの重要鉱物の確保が課題となっています。資源の安定供給と循環利用の両立が求められています。
鉱業分野では、環境への配慮から、採掘技術の高度化や環境修復技術の開発が進んでいます。また、海底資源の開発に向けた取り組みも注目されています。
電子・電気機器
電子・電気機器業界は、5Gの普及やIoTの進展により、大きな変革期を迎えています。半導体の需要が急増する中、生産能力の拡大と供給網の強化が課題となっています。
家電メーカーは、スマートホーム関連製品の開発に注力しています。AI搭載の家電や、遠隔操作が可能な製品など、生活の利便性を高める製品が次々と登場しています。
産業機器分野では、工場の自動化・省人化ニーズの高まりを受け、産業用ロボットやFA(ファクトリーオートメーション)機器の開発が活発化しています。
自動車・輸送用機器
自動車業界は、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)と呼ばれる技術革新の波に直面しています。電気自動車(EV)の開発・普及が加速する一方、自動運転技術の実用化に向けた取り組みも進んでいます。
部品メーカーは、EVシフトに伴う業界再編の波にさらされており、新たな成長分野への事業転換が課題となっています。
航空機業界では、環境負荷の低減に向けた取り組みが進んでおり、電動化や水素燃料の活用など、次世代航空機の開発が活発化しています。
精密・医療機器
精密機器業界では、IoTやAIの進展により、センサーやカメラなどの需要が拡大しています。また、半導体製造装置や検査装置なども好調です。
医療機器分野では、高齢化社会を背景に需要が拡大しています。画像診断装置やロボット支援手術システムなど、先端技術を活用した機器の開発が進んでいます。また、ウェアラブルデバイスを活用した遠隔医療システムの普及も進んでいます。
印刷・事務機器関連
印刷業界は、デジタル化の進展により、従来の紙媒体の需要が減少傾向にあります。そのため、デジタル印刷技術の高度化や、パッケージ印刷など新たな分野への展開が進んでいます。
事務機器業界では、テレワークの普及を背景に、クラウドサービスと連携したオフィス機器の開発が進んでいます。また、ペーパーレス化に対応するため、文書管理システムやデジタルサイネージなどの開発にも力を入れています。
これらの業界全体を通じて、デジタル化、環境対応、労働力不足への対策が共通の課題となっています。各メーカーは、これらの課題に対応しながら、新たな価値創造と持続可能な成長を目指して取り組みを進めています。
メーカー・製造業に関連する職種を紹介
メーカー・製造業には多様な職種が存在し、製品の企画から製造、販売まで幅広い分野で専門性を持った人材が活躍しています。以下に主要な職種を紹介します。
研究開発職
研究開発職は、新製品の開発や既存製品の改良を行う重要な役割を担っています。最先端の技術を駆使し、市場ニーズに合わせた製品を生み出すことが求められます。
材料研究員
材料研究員は、新素材の開発や既存素材の改良を行います。例えば、東レや旭化成などの化学メーカーでは、炭素繊維や高機能樹脂の開発に取り組んでいます。
製品開発エンジニア
製品開発エンジニアは、具体的な製品の設計や機能の検討を行います。トヨタ自動車やホンダなどの自動車メーカーでは、次世代の電気自動車や自動運転技術の開発に携わっています。
生産技術職
生産技術職は、製品を効率的かつ高品質に製造するための生産ラインの設計や改善を行います。製造プロセスの最適化や自動化技術の導入などが主な業務です。
生産設備エンジニア
生産設備エンジニアは、製造ラインの設計や保守を担当します。パナソニックや日立製作所などの電機メーカーでは、IoTやAIを活用したスマートファクトリーの構築に取り組んでいます。
品質管理エンジニア
品質管理エンジニアは、製品の品質を維持・向上させるための施策を立案し実行します。食品メーカーのカルビーや味の素では、厳格な品質管理システムを構築し、安全性の確保に努めています。
製造職
製造職は、実際に製品を生産する現場で働く職種です。生産ラインの運営や製品の組み立て、検査などを行います。
製造オペレーター
製造オペレーターは、生産ラインでの製品製造を担当します。キヤノンやリコーなどの精密機器メーカーでは、高度な技術を要するカメラやプリンターの組み立てを行っています。
保全技術者
保全技術者は、製造設備の保守や修理を行い、生産ラインの安定稼働を支えます。新日鉄住金や神戸製鋼所などの鉄鋼メーカーでは、大規模な製鉄所の設備メンテナンスを担当しています。
商品企画職
商品企画職は、市場調査や顧客ニーズの分析を通じて、新製品の企画や既存製品のリニューアルを行います。マーケティング的な視点と技術的な知識の両方が求められます。
プロダクトマネージャー
プロダクトマネージャーは、製品の企画から販売戦略までを一貫して管理します。ソニーや任天堂などの家電・ゲーム機器メーカーでは、革新的な製品の企画立案を行っています。
マーケティングリサーチャー
マーケティングリサーチャーは、市場動向や消費者ニーズの調査・分析を行います。資生堂やカネボウなどの化粧品メーカーでは、女性の美意識や生活スタイルの変化を綿密に調査しています。
営業職
営業職は、製品の販売促進や顧客との関係構築を担当します。B to BとB to Cの両方の領域で重要な役割を果たしています。
法人営業
法人営業は、企業や官公庁などの法人顧客に対して製品やサービスを提案・販売します。コマツや日立建機などの建設機械メーカーでは、建設会社や鉱山会社向けの大型案件を担当しています。
リテール営業
リテール営業は、小売店や代理店を通じて一般消費者向けに製品を販売します。アサヒビールやキリンビールなどの飲料メーカーでは、スーパーやコンビニエンスストア向けの営業活動を展開しています。
購買・調達職
購買・調達職は、製品の原材料や部品の調達を担当します。コスト削減と品質確保の両立が求められる重要な職種です。
資材調達スペシャリスト
資材調達スペシャリストは、原材料や部品のサプライヤーの選定や価格交渉を行います。トヨタ自動車やデンソーなどの自動車関連メーカーでは、グローバルな調達ネットワークを構築しています。
サプライチェーンマネージャー
サプライチェーンマネージャーは、原材料の調達から製品の配送まで、全体の物流を最適化します。ユニクロを展開するファーストリテイリングでは、世界規模でのサプライチェーン管理を行っています。
設計職
設計職は、製品の構造や機能を具体的な図面や3Dモデルに落とし込む役割を担います。高度な専門知識と創造性が求められます。
機械設計エンジニア
機械設計エンジニアは、製品の機械的な構造や動作機構を設計します。三菱重工業やIHIなどの重工業メーカーでは、大型の産業機械や航空機エンジンの設計を行っています。
電気・電子設計エンジニア
電気・電子設計エンジニアは、製品の電気回路や制御システムを設計します。ルネサスエレクトロニクスや東芝などの半導体メーカーでは、最先端のマイクロプロセッサやメモリの設計に取り組んでいます。
品質保証職
品質保証職は、製品の品質を保証し、顧客満足度の向上に寄与する重要な役割を担います。製造工程全体を通じて品質管理を行います。
品質保証エンジニア
品質保証エンジニアは、製品の品質基準の策定や検査方法の確立を行います。トヨタ自動車やホンダなどの自動車メーカーでは、厳格な品質管理システムを構築し、世界中で高い評価を得ています。
信頼性試験エンジニア
信頼性試験エンジニアは、製品の耐久性や安全性を検証するための試験を計画・実施します。パナソニックや日立製作所などの家電メーカーでは、厳しい環境下での製品性能を確認しています。
これらの職種は、メーカー・製造業の中核を担う重要な役割を果たしています。各職種が密接に連携することで、高品質な製品が生み出され、日本のものづくりの競争力を支えています。近年では、デジタル技術の進展に伴い、AI・IoT・ビッグデータなどの知識を活用できる人材の需要が高まっており、従来の専門性に加えて、新しい技術への適応力も求められています。
メーカー・製造業のトピックス
デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速
メーカー・製造業界では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが急速に進んでいます。IoT、AI、ビッグデータなどの先端技術を活用し、生産性の向上や新たな付加価値の創出を目指しています。
例えば、トヨタ自動車は「コネクティッドファクトリー」構想を推進し、工場内の機器をネットワークでつなぎ、リアルタイムでデータを収集・分析することで、生産効率の向上を図っています。また、コマツは「スマートコンストラクション」というIoTを活用した建設現場の効率化サービスを展開しています。
サステナビリティへの取り組み強化
環境問題への関心が高まる中、メーカー各社はサステナビリティへの取り組みを強化しています。再生可能エネルギーの利用拡大、CO2排出量の削減、循環型経済の実現などが重要なテーマとなっています。
ソニーグループは2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指す「Road to Zero」を掲げ、製品のライフサイクル全体での環境負荷低減に取り組んでいます。また、花王は使用済みプラスチックを再生利用する「リサイクリエーション」プロジェクトを推進しています。
グローバルサプライチェーンの見直し
新型コロナウイルス感染症の世界的流行や米中貿易摩擦の影響を受け、多くのメーカーがグローバルサプライチェーンの見直しを迫られています。調達先の分散化や国内回帰の動きが加速しています。
パナソニックは中国依存度の高かった空調機器の生産の一部をマレーシアに移管し、リスク分散を図っています。また、シャープは液晶パネルの生産を台湾から国内に移す計画を発表しました。
5Gの普及による新たな製品・サービスの創出
5G(第5世代移動通信システム)の商用化が進み、メーカー各社は5Gを活用した新たな製品やサービスの開発に注力しています。特に、自動運転車や遠隔医療、スマートファクトリーなどの分野で革新的なソリューションが期待されています。
NTTドコモは5G時代に向けた新たなデバイスとして「XR(クロスリアリティ)グラス」を開発し、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)を活用した新しいサービスの提供を目指しています。
人手不足対策としての自動化・ロボット化の推進
少子高齢化による労働力不足を背景に、メーカー各社は生産ラインの自動化やロボット導入を加速させています。人とロボットが協調して働くコボット(協働ロボット)の活用も広がっています。
ファナックは、人とロボットが安全に協働できる「CRX協働ロボット」シリーズを展開し、中小企業での導入を促進しています。また、オムロンは自律型モバイルロボット「LD」シリーズを開発し、工場や物流センターでの搬送作業の効率化を支援しています。
カーボンニュートラルへの対応
2050年までのカーボンニュートラル実現に向けて、メーカー各社は製品のライフサイクル全体でのCO2排出量削減に取り組んでいます。特に自動車業界では、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の開発・普及が急ピッチで進んでいます。
日産自動車は2030年代早期より主要市場で新型車をすべて電動車両にする方針を発表しました。また、JFEスチールは水素還元製鉄技術の開発を進め、鉄鋼製造過程でのCO2排出量削減を目指しています。
モノのサービス化(サブスクリプションモデル)の拡大
従来の「モノを売り切る」ビジネスモデルから、継続的にサービスを提供する「サブスクリプションモデル」への移行が進んでいます。これにより、安定的な収益確保と顧客との長期的な関係構築を目指しています。
コマツは建設機械の稼働状況をリアルタイムで監視し、最適なメンテナンスを提供する「KOMTRAXプラス」というサービスを展開しています。また、キヤノンは複合機を月額定額で利用できる「HOME」というサブスクリプションサービスを提供しています。
オープンイノベーションの推進
技術革新のスピードが加速する中、自社だけでなく外部のリソースも積極的に活用するオープンイノベーションの取り組みが活発化しています。スタートアップ企業との連携やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の設立が増えています。
パナソニックは「Panasonic Ventures」を通じて、革新的な技術やビジネスモデルを持つスタートアップへの投資を行っています。また、富士通は「富士通アクセラレータープログラム」を通じて、AIやIoT分野のスタートアップとの協業を推進しています。
ものづくりのデジタル化(デジタルツイン、3Dプリンティング)
製品開発や生産プロセスのデジタル化が進んでいます。デジタルツイン技術を活用した仮想空間でのシミュレーションや、3Dプリンティング技術による試作品製作の効率化などが注目されています。
ダイキン工業は空調機器の開発にデジタルツイン技術を導入し、開発期間の短縮と品質向上を実現しています。また、DMG森精機は金属3Dプリンターを活用した新しい製造方法「アディティブマニュファクチャリング」の普及に取り組んでいます。
働き方改革と生産性向上の両立
働き方改革関連法の施行を受け、メーカー各社は長時間労働の是正や有給休暇取得の促進に取り組む一方で、生産性の向上も重要な課題となっています。テレワークの導入やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用などが進んでいます。
日立製作所は「ワークライフ・イノベーション」を推進し、テレワークの拡大や業務のデジタル化を通じて、働き方の柔軟化と生産性向上の両立を図っています。また、コニカミノルタはRPAを全社的に展開し、業務効率化と労働時間削減を実現しています。