最新版!業界研究|百貨店編

「百貨店」篇


百貨店の業界研究

「コンビニエンスストアと比較して百貨店ってどんな業界?」と疑問に思ったことはありませんか? 本記事では、就職活動や転職活動をしている方向けに、百貨店の業界について解説していきます。百貨店の現状や将来性、仕事内容を知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

百貨店の業界について

百貨店の概要

百貨店とは、衣料品、食料品、家具、家電製品など、幅広い商品を扱う大型小売店のことです。高級志向の商品構成と、洗練されたサービスで知られています。日本においては、三越、伊勢丹、高島屋などが代表的な百貨店として挙げられます。

百貨店は、伝統的に都市部の一等地に大型店舗を構え、多くの顧客を魅了してきました。店内は広々としており、商品が美しく陳列されている点が特徴です。また、顧客一人一人に丁寧な接客を行う専門の販売員が配置されていることも多く、上質なショッピング体験を提供することに力を入れています。

百貨店の市場規模

日本の百貨店業界は、長らく売上減少の傾向にあります。少子高齢化による人口減少、消費者の節約志向の高まり、そして、ECサイトなど、競合となる小売業態の出現がその背景として挙げられます。

経済産業省の「商業動態統計調査」によると、2022年の全国百貨店売上高は、約4兆5,000億円でした。これは、ピークであった1991年の約9兆7,000億円と比較すると、半分以下の規模となっています。しかし近年では、コロナ禍の影響によるインバウンド需要の消失もあり、厳しい状況が続いています。

百貨店のビジネスモデル

百貨店のビジネスモデルは、大きく分けて「テナント収入」と「販売手数料」の2つから成り立っています。

テナント収入

百貨店は、多くのブランドやメーカーに売場スペースを貸し出し、その対価としてテナント収入を得ています。百貨店に入居することで、ブランドは集客力やブランドイメージの向上を期待できます。一方、百貨店側は、魅力的なブランドを誘致することで、顧客満足度を高めることができます。

販売手数料

百貨店は、自社で商品を仕入れて販売するだけでなく、ブランドから商品を委託されて販売する「消化仕入」という販売形態をとることもあります。この場合、百貨店は、販売した商品の売上に対して、一定の手数料を受け取ります。

百貨店の将来予測と展望

厳しい状況が続く百貨店業界ですが、生き残りをかけて様々な取り組みが行われています。

体験型サービスの充実

ECサイトとの差別化を図るため、リアル店舗ならではの体験型サービスの充実が図られています。例えば、顧客が商品を実際に試したり、専門スタッフからアドバイスを受けられるイベントやワークショップの開催、また、高級レストランやカフェを併設することで、顧客の滞在時間を延ばし、購買意欲の向上を目指しています。

オンライン販売の強化

ECサイトとの競争が激化する中、百貨店もオンライン販売に力を入れています。自社ECサイトの開設や、Amazonなどの大手ECモールへの出店など、オンラインでの販売チャネルを拡大することで、顧客との接点を増やしています。また、オンラインで注文した商品を店舗で受け取れるサービスなど、オンラインとオフラインを融合したサービスも展開されています。

不動産事業の強化

都心の一等地に立地する百貨店は、その不動産価値にも注目が集まっています。建物の有効活用として、オフィスやホテルなどの複合施設開発を進めることで、新たな収益源の確保を目指しています。

これらの取り組みを通じて、百貨店業界は、新たなビジネスモデルの構築を目指しています。変化の激しい時代の中で、顧客のニーズを捉え、進化を続けることが、百貨店の生き残りの鍵となるでしょう。

百貨店の仕事を徹底調査

華やかで洗練されたイメージの強い百貨店。そこで働くことは、多くの人にとって憧れと言えるでしょう。しかし、具体的にどのような職種が存在し、どのような仕事内容なのか、イメージだけで捉えきれていない部分も多いのではないでしょうか。ここでは、百貨店の仕事内容について詳しく解説していきます。

どのような職種があるのかを徹底理解

百貨店には、多種多様な職種が存在します。大きく分けると、販売・接客、商品管理、営業、企画、総務・人事、経理などの部門があります。それぞれの部門に、さらに細分化された職種が存在します。

販売・接客部門

百貨店の顔とも言える、お客様に直接接する仕事です。お客様の要望を丁寧にヒアリングし、最適な商品を提案します。商品の知識はもちろん、お客様とのコミュニケーション能力、販売スキルが求められます。

  • ビューティーアドバイザー:化粧品や香水の販売、美容アドバイスを行います。
  • ファッションアドバイザー:アパレル商品の販売、コーディネートの提案を行います。
  • ジュエリー販売スタッフ:宝飾品の販売、お客様の要望に合わせた商品選びをサポートします。

商品管理部門

お客様に商品をスムーズに提供するための、縁の下の力持ち的な存在です。在庫管理、納品、検品、商品陳列などを行います。正確性や丁寧さ、段取り力が求められます。

営業部門

百貨店に出店するテナントの誘致や、売上管理、販売促進活動などを行います。コミュニケーション能力や交渉力、マーケティングの知識が求められます。

企画部門

イベントやフェアの企画・運営、広告宣伝、商品開発などを行います。トレンドを捉える感性や、発想力、実行力が求められます。

総務・人事部門

従業員の採用、教育、労務管理、給与計算など、会社全体に関わる業務を行います。事務処理能力やコミュニケーション能力、法律に関する知識が求められます。

経理部門

売上管理、経費精算、決算業務など、会社の財務に関わる業務を行います。正確性や責任感、数字に強い能力が求められます。

百貨店に向いている人はどんな人

百貨店は、お客様に最高のサービスを提供することを目指す職場です。そのため、人と接することが好きで、ホスピタリティ精神旺盛な人に向いています。また、常に変化するトレンドに敏感で、新しいものに興味を持つことも大切です。さらに、チームワークを重視し、周囲と協力しながら仕事を進められる人も向いています。

  • 人と接することが好きで、明るく丁寧な対応ができる人
  • お客様の立場に立って、物事を考えられる人
  • 責任感が強く、最後までやり遂げることができる人
  • ファッションやトレンドに興味関心が高い人
  • チームワークを大切にし、協調性を持って仕事ができる人

百貨店に向いていない人はこんな人

一方で、ルーティンワークを好む人や、一人で黙々と作業をすることが好きな人には、百貨店の仕事は合わないかもしれません。また、変化を嫌い、新しい環境に馴染むことが苦手な人にも、向いていないと言えるでしょう。さらに、自分の意見ばかりを主張し、周囲との協調性がない人も、百貨店の仕事には適していません。

  • ルーティンワークを好み、変化を嫌う人
  • コミュニケーションを取ることが苦手で、一人で仕事をすることを好む人
  • 指示されたことだけをこなすだけで、自ら行動することができない人
  • 協調性がなく、周囲とトラブルを起こしやすい人

百貨店の仕事は、華やかなイメージとは裏腹に、お客様に満足を提供するために、地道な努力を惜しまない忍耐強さが求められます。しかし、お客様の笑顔や「ありがとう」の言葉は、大きな喜びとやりがいを与えてくれます。ぜひ、自分に合った職種を見つけて、百貨店での仕事に挑戦してみて下さい。

百貨店と働き方が似ている業界とは?

百貨店と働き方が似ている業界として、いくつかの観点から代表的なものを紹介します。

顧客層の類似性で考える

百貨店は高級志向や上質なサービスを求める顧客層が多く来店します。そのため、同様の顧客層をターゲットとする業界は働き方も似てくるでしょう。

専門店

高級ブランドショップや宝飾店、時計店などは、百貨店と顧客層が重なる部分が多く、接客スキルや商品知識のレベルも近いものが必要です。高額商品を扱うことも多いため、丁寧な接客や顧客との信頼関係構築が求められます。

高級ホテル

高級ホテルもまた、上質なサービスを提供することに重きを置く点で百貨店と共通しています。顧客一人ひとりのニーズに合わせたきめ細やかなサービスや、ラグジュアリーな空間演出など、共通して求められるスキルや経験は多いでしょう。コンシェルジュや宿泊部門など、顧客との距離感が近い職種は特に、百貨店での経験が活かせる可能性があります。

ビジネスモデルの類似性で考える

百貨店は、多様な商品やサービスを提供する「総合的な顧客体験」を提供するビジネスモデルです。そのため、同様のビジネスモデルを持つ業界では、働き方も類似する部分が多いと考えられます。

ショッピングセンター/商業施設

ショッピングセンターや商業施設は、百貨店ほど高級志向ではないものの、多様なテナントを誘致し、幅広い顧客層に訴求する点で共通しています。施設全体の売上管理、イベント企画、テナントとの連携など、百貨店で培った経験やスキルが活かせるでしょう。顧客満足度向上のための取り組みや、集客のためのマーケティング活動なども重要な業務となります。

テーマパーク

テーマパークもまた、エンターテイメント、飲食、物販など、様々なサービスを複合的に提供することで顧客満足度を高めるビジネスモデルを採用しています。顧客を楽しませるためのホスピタリティ精神や、安全管理、混雑時の対応など、百貨店と共通するスキルや経験が求められます。アトラクション運営やショーの企画・演出など、エンターテイメント性の高い業務に携わることも可能です。

販売スキルの応用で考える

百貨店での仕事で培われる高い接客スキルや販売スキルは、他の業界でも応用可能です。顧客とのコミュニケーションを重視する業界や、商品の魅力を伝えるスキルが求められる業界では、百貨店での経験が強みとなります。

アパレル業界

アパレル業界では、顧客の好みや体型に合わせたコーディネート提案や、商品の素材やデザインに関する専門知識が求められます。百貨店での接客経験を通じて、顧客とのコミュニケーション能力や商品知識を磨いてきた人は、アパレル業界でも活躍できる可能性が高いです。販売職だけでなく、バイヤーやプレスなど、ファッションに関する専門知識を活かせる職種も考えられます。

化粧品業界

化粧品業界も、顧客の肌質や悩みに合わせた商品提案や、メイクアップのアドバイスなど、高度な接客スキルが求められる業界です。百貨店の化粧品売り場での経験があれば、商品の専門知識や顧客とのコミュニケーションスキルを活かして、美容アドバイザーやビューティーコンサルタントなどとして活躍できるでしょう。新商品の開発やマーケティングなど、美容に関する知識や感性を活かせる職種も魅力的です。

これらの業界以外にも、百貨店での経験やスキルは、様々な業界で活かすことができます。大切なことは、自分の強みを理解し、どのような仕事で活かしたいのかを明確にすることです。そして、積極的にチャレンジすることで、新たな可能性を広げていくことができるでしょう。